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読んだ小説等の感想

野尻抱介『南極点のピアピア動画』
靖子靖史『ハイライトブルーと少女』
河野裕子・永田和宏『たとへば君 四十年の恋歌』
ヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』
武山英子『傑作歌選 第二輯 武山英子』


野尻抱介『南極点のピアピア動画』(ハヤカワ文庫JA)
動画共有サイト「ピアピア動画」をめぐる四編からなる連作SF。別々の話かと思っていた各編がきれいに繋がっていく構成は見事。冒頭二編を読んだ時はこれほどスケールの大きな話になるとは思わなかった。某動画サイトがモデルなだけに妙に現実感があるけれど、展開は理想的過ぎるほどに平和で希望に満ちている。起こり得る外交問題の一切を捨象しているからこそ可能な世界だろう。地球と宇宙と言うより、日本と宇宙と言うべき世界観。それ故にドロドロした展開が避けられており、爽快な読後感をもたらす作品として結実している。



靖子靖史『ハイライトブルーと少女』(講談社BOX)
会社員ウミノと煙草屋の少女サナエとの交流を描いた青春(?)ライトノベル。結末に至る展開や途中で提示された秘密の幾つかは予想通りの結果だったが、奇をてらわないプロットがこの作品の良さなのだろう。それとともに、登場人物が皆まっすぐなことも好印象だった。これを読みながら普段はピース派の自分もハイライトを吸ってみたが、やはりこの味はちょっと苦手。



河野裕子・永田和宏『たとへば君 四十年の恋歌』(文春文庫)
タイトルはあまりにも有名なあの歌。国語教科書にも取り上げられるその歌は、河野裕子の経歴から言えば初期の作にあたる。その後の人生がどうであったか、その時々でどんな歌が作られたか。ともに歌人である二人の生活から歌の背景が実に生々しく見えてくる。非の打ち所のない夫婦とは言えない出来事も時にあるけれど、それもひとつの現実として憧れる。河野の死の前後は読んでいて本当に辛かった。



ヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』(創元ライブラリ)
19世紀末に発表されたSF作品。「アンドロイド」なる語を人造人間として用いた最初の作品とされる。そのせいか、素材や機構を説明するエジソンの台詞がとにかく長い。アンドロイドの概念が定着していない時代に鑑みて当然かもしれないが、今日の目で見ると冗長な印象を免れない。また、全体に亘って哲学的な議論が多く、SFと思って読むと話が脱線しているように感じてしまう。その議論の核心は「幻影と現實のどちらを選びますか」(p.449)という問いに尽くされている。これは現代にあっても容易に答えが出ない問いかもしれない。二次元の女性を「嫁」とすることが、まだ社会に認められてはいないように。



武山英子『傑作歌選 第二輯 武山英子』(抒情詩社)
金子薫園の妹、武山英子の(おそらく)唯一の単著歌集。本書刊行の半年後に死去。病弱で常に死を意識していたらしく、「泣く」「かなし」「さびし」等、暗々たる表現が並ぶ。療養のため教師を辞した後は家に籠もるしかなかったようで、「生れたる家に死ぬべき運命につながるるやと或はおそるる」といった歌が多い。「縁さきの塵埃の中につまだちて見えぬ彼方の秋風をきく」、耳に聞く風の行方として思うしかなかった彼方は、遂に見られなかったのかもしれない。恋人らしき「君」を詠うにも「君によりて足らひし生はたらひたるままに終りを告げなむとする」と、死の影が付きまとう。終りは「たらひたるままに」迎えられたのだろうか。

  1. 2016-04-16 Sat 01:01|
  2. 読書メモ

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