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大日本文学会『文章講習録』について

一月末に某所で開催された古本市で、おもしろそうな本を見かけた。

その名も『文章講習録』。

目次を見る限り、作文作法に関する本のようだが、奥付も無いので詳しい書誌情報はわからない。
うちの大学の付属図書館にも所蔵されていないみたいだし、何か関連する論文等がないかとCiNiiで検索するも全く引っかからず。

これは俄然気になってくる。
ということで、買って帰っていろいろと調べてみた。




bunshokoshu1.jpg
(画像をクリックで拡大表示。以下同じ。)

見た目はこんな感じ。
前・後の二巻に分かれている。


本の扉のページには、「文章講習録」という題と、出版地である「東京」、出版者とおぼしき「大日本文学会」なる表記がある。

さて、この「大日本文学会」とは何者だろう。
目次の次のページに、この会のメンバーと思われる顧問・講師の面々が写真付きで列挙されていた。


bunshokoshu2.jpg
顧問
坪内逍遥、森鴎外、夏目漱石、幸田露伴、大町桂月、五十嵐力、島村抱月


bunshokoshu3.jpg
講師1
沼波瓊音、小川未明、吉江孤雁、生田長江、本間久雄、田山花袋、徳田秋声、滝田樗陰、土岐哀果、相馬御風、小山内薫、片上伸


bunshokoshu4.jpg
講師2
楠山正雄、前田晁、永井荷風、三木露風、森田草平、中村吉蔵、鈴木三重吉、中村星湖、窪田空穂、前田夕暮、水野葉舟、島村民蔵(理事)


聞き覚えのある名前が、これでもかと言うくらい並んでいる。
どうやらこれが、大日本文学会なるもののメンバーらしい。

これだけのメンバーが揃っていて、しかも「大日本文学会」などという大仰な名前が付いているにも関わらず、なかなか情報は出てこない。
この「大日本文学会」についてもCiNiiをはじめとしたいくつかのツールで調べてみたが、目ぼしい情報は無かった。
なお、webcatで調べたところこの本(文章講習録)は大学の附属図書館では千葉大にしかないらしい。
これまた不思議。


ネット上ではこれ以上のことがわかりそうにない。
ということで、図書館に行ってもう少し調べてみた。



しかし、図書館でも情報は少なかった。
先日の記事でも触れた『編年体大正文学全集』の年表(月単位で書かれている、詳細な年表)を見ても全く出てこない。(NDL-OPACの書誌情報により出版年が大正3-4年ということはわかっていたので、そのあたりを隈なく見たにも関わらず。)
理事となっている島村民蔵についても調べたが、大日本文学会なる団体の理事をしていたという明確な記述は見つからなかった。

唯一見つかったのは、講談社の『日本近代文学大事典』における以下の記述。

「大正文学」たいしょうぶんがく
文学志望者を対象にした会員制の投稿雑誌。大正三・九〜四・一〇。一二冊。編集兼発行人島村民蔵。大日本文学会発行。
(中略) 並行して『文章講習録』が発行され、添削の通信教授もした。

なるほど、これでどういうものかわかった。
つまりは通信講座のテキストというわけだ。
一般書店に並んだ本でないのなら、数が少ないのも頷ける。
どうりでなかなか出てこないわけである。

同様の文学講座としては、佐藤義亮(新潮社創業者)ら大日本文章学会(後、大日本文章学院に改名)による文章講義録が、当時(明治末)としてはヒットしたらしい。
この日本文章学院の母体だった新声社が新潮社に変わった後には、『近代文学講義録』というものも発刊されている。
これの執筆者には生田長江や島村抱月、相馬御風など『文章講義録』講師の名も見える。

『近代文学講義録』の発刊が大正2年、『大正文学』の発刊がその翌年の9月。
全く関連が無いとは思えない。
この頃には他にもいくつもの通信講座が生まれているようだから、今回取り上げた『文章講習録(大正文学)』も、これらと共に生まれた講義録の一つと考えてよさそうだ。



(追記)
先日、偶然にも文章講習録の内容見本を入手することができた。
通信講座としての概要がよくわかるので画像とともに紹介する。


bunshokoshu5.jpg
表紙。「見本」の文字が見える。



bunshokoshu6.jpg
「見よ 充実せる其内容」

bunshokoshu7.jpg
「本会講習録に対する世評一斑」

bunshokoshu8.jpg
「今回の入会者には開講記念の為め左の大特典無代進呈」

いかにもな宣伝だが、実際に内容は充実している。
それにしても、「今なら〇〇無料進呈」って、大正時代からあったのか……。


bunshokoshu9.jpg
振込み用紙兼入会申込書。




ひとつだけ気になったのは以下の記述。

bunshokoshu10.jpg

機関誌の名前が「文光」となっている。
『日本近代文学大事典』の記述に従えば「文章講習録」と並行して発行された雑誌は「大正文学」という名前のはずだが……。
最初は「文光」という名前にする予定だったのだろうか。
詳しいことはわからない。




だいたいこんな感じ。
詳しい内容については触れなかったが、各分野の第一人者による非常に興味深い講義がたくさん収録されている。
機会があればそれについても紹介しょうかと思う。
  1. 2011-03-19 Sat 20:03|
  2. 文学

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