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「プリン」と「婦凛」という虚構

Twitterで、本居宣長の『古事記伝』にプリンのことが記されているという話を見かけた。
さらに、『常陸国風土記』にも出ているという。
まさか、と思って調べてみたのでメモしておく。

「プリン 古事記伝」等のワードで検索すると、たしかに幾つものウェブサイトが引っかかる。
例えば、以下のもの。

にっぽんプリン史……BRIDGE USA(情報誌)
・婦凛の正しい食し方……洋菓子店のブログ(2014/6/17 記事削除確認)
プリンの歴史……国際プリン協会会長プリン日記(プリン愛好家団体のブログ)

これらに書かれていることは概ね共通している。すなわち、

・『古事記伝』に「その味、風鈴のようにして、冷たく、以って婦凛(ぷりん)と名付くる」とある。
・『常陸国風土記』にも「婦凛」についての言及がある。
・「春和良定家」なる人物が著した『元紀』に、「婦凛」の食べ方が記されている。
・土方歳三の『豊玉集』に「梅雨明の天の下たる尾根の婦凛」という句がある。

……等々。

特に、「プリン」は「婦凛」と表記されたという点は、個々のエピソードに触れない他のブログ等でも多くの言及が見られた。
ちなみに、「婦凛」という語(表記)は、辞書を引いても出てこない。これはあやしい。原典にあたる前に噂の出どころを確かめたほうが手っ取り早いだろう。

Googleで期間指定検索をしてみるとすぐに発生源が特定できた。
それがこれ。プリンの黒歴史
上記のウェブサイトに書かれているあやしげな噂のすべてがここからはじまっていることがわかる。
このページ内にはこれが創作であるということは記されていないが、こういうものは「序文」や「凡例」にあたるものを確かめる必要がある。
このサイトのトップページから執筆者のプロフィールを見ると、「精密に事実を混ぜて信憑性を増した嘘(プリンの黒歴史など参照)」とある。
要するにあのプリンの記事は創作なのだ。そうとは知らず多くの人が史実であるかのように転載を繰り返し、こうした噂が広まっていったようだ。

ちなみに、執筆者のいう「事実」と「嘘」がどれにあたるのか、明記されてはいないが、調べた限りでは

・『古事記伝』に「プリン」や「婦凛」についての言及はない。
・『常陸国風土記』にもない。

ということは確かである。
また、

・「春和良定家」なる人物が記した『元紀』
・土方歳三『豊玉集』にあるという「梅雨明の天の下たる尾根の婦凛」

の初出もこの記事で、それ以前に遡ることは(ネット上でも、確認した限りの書籍でも)できない。

少し調べれば創作であることは見抜けるはずだが、信じて確認せずに転載が行われたのだろう。「精密に事実を混ぜて信憑性を増した」企みは見事に成功してしまったようだ。

こんなことを調べていると、なんだか中世日本紀を思い出す
ひとつの虚構が権威をもった書名とともに語られて、引用を繰り返されながら事実のようになっていく、その過程をまざまざと確認できたように思う。
  1. 2014-06-14 Sat 14:02|
  2. 文学

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