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読んだ小説の感想(2014年12月分)

12月分の読書メモ。

深山森『ラジオガール・ウィズ・ジャミング』
松山剛『雨の日のアイリス』
大島真寿美『やがて目覚めない朝が来る』
ピート・ハウトマン『時の扉をあけて』
深沢七郎『楢山節考』

……の5冊。

深山森『ラジオガール・ウィズ・ジャミング』(電撃文庫)
「善人・悪人、そんなものはただ、それぞれが成し得た行為に対する結果的な呼称にすぎない。ひとは、ただのひとだ」(p.266)という考え方が本作品の基調をなしていると感じた。軍隊も暴徒もカウマンもJ・O・Lも、互いが悪人に見えたり善人に見えたりするけれど、結局のところ同じ夢を求めるひとに過ぎない。そのためにそれぞれが為すことが互いにとっての障害に見えるというだけで、レコリスの呼びかけのようなきっかけさえあれば、わかりあうこともできる。大切なのは隣人を知ること。メディアにはその力がある。そんな希望をもてる作品。
余談。J・O・Lのラジオを通して「無秩序の集落」が「街」になった過程がエピローグに語られている(pp.285-287)。それを読んで、マクルーハン『グーテンベルクの銀河系』の言う「地球村」の概念を思い出した。電子メディアは離れたところにいる人びとの生活を繋いで、ひとつの「村」を形成する。J・O・Lのラジオはまさにその機能をもって終戦時の希望となり得ていたと言える。

松山剛『雨の日のアイリス』(電撃文庫)
感情をもったロボットがなおモノとして扱われる社会を描く作品。感情を与えるならば、いわゆるロボット工学三原則を押し付けてはならないと思うし、まして感情操作によってその原則を守らせるのは間違っている。ロボットに道徳心があり得るならば、もはや三原則は強制するべきものではなく、教育を通して芽生えさせるべきもの。本作に描かれる社会は、人とロボットとが近づくほどの技術的段階にありながら、倫理・制度がそれに追い付いていない。人とロボットとの間の無くてもいい溝がそこにある。アイリスの経験と活動とはそれを埋める一助になるだろうか。

大島真寿美『やがて目覚めない朝が来る』(ポプラ文庫)
最初は「実感するのが、とにかく難しかった」(p.123)という父との死別、次には周囲の親しい人々との死別、最後には「ずっとここにいるんじゃないかな」(p.209)と感じていた蕗さんとの死別。死は、単に理解するものから実感するものへと変わってゆく。誰のもとにも「やがて目覚めない朝は来る」。もちろん、自分にも。ジャンケレヴィッチの語を借りれば、実感し難い第三人称態の死を皮切りに、第二人称態の死の経験を繰り返し、やがて第一人称態の死に意識が及ぶ構成。ただし、重苦しさはなく、あくまでも暖かみを感じられる作品。

ピート・ハウトマン『時の扉をあけて』(創元SF文庫)
ファンタジー的サスペンス的タイムトラベル系作品。ひとつのジャンルに収まらない微妙なバランスの上に立つ作品だけど、テーマは一貫しており、極めておもしろい。その意味では、SFとして読まないほうが純粋に楽しめると思う。タイムトラベル自体は言わば一つの装置であって、作品の主眼はその装置を通して過去や未来に対峙する主人公の心理描写にある。巻末の解説もそうした面から書かれているが、「~こそが~なのだ」と説かれるそれの大部分は解説者の付会。勝手な人物設定をもちこんで作品の読みを狭めてしまうにはもったいない良作。
何かに雰囲気が似ている、とモヤモヤ考えていたけれど、さっき気づいた。ラヴクラフトだ。さびれた田舎町、古びた館にある秘密、自分の出自の謎、悪夢、精神錯乱……といったキーワード。話としては全くタイプが違うものの、読んでいる最中はどことなく似た雰囲気を感じる。問題の根本にありながらついに正体が明らかになることはない超自然的な何か(或いは誰か?)の存在が、紙背に薄らと感じられることなんかも同様。きれいに終わったように見えて、ほんの少しの気がかりが残されているために、長く記憶に残りそうなことも。

深沢七郎『楢山節考』(新潮文庫)
「村では昔は年寄りを裏山に捨てたものだった」(p.93)―― 「昔」は食料等の問題からやむを得ず行われたであろう棄老。おりんはしかし、そうした実際的な問題としてではなく、村社会における矜持を保つものとして山へ赴く。社会の意志ではなく、社会的存在としての自己の意志によって。必要に迫られた手段(棄老)ではなく、伝統に裏付けられた習俗(「楢山まいり」)として。死が宗教的意義を帯びることで、自身の命の重さは朧化される。それが自分一人の悲劇ではなく、社会に保証された伝統であると信じられる限り。
  1. 2015-01-05 Mon 04:15|
  2. 読書メモ

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